「親なきあと」の生活を支えるさまざまな制度のことを知ることができたとしても、ではそれらをいつから利用すればいいのか、その判断はなかなか難しいと思います。
そこで、本人の年代別に分けて、どのタイミングでどのような制度の利用を考えればいいのかについて、3回に分けてご紹介していきます。もちろん本人や家族の状況によって違いはあります。すべての方に同じように当てはまるわけではありませんが、一つの目安にはしていただけると思います。
手帳の取得が「親なきあと」の第一歩。医療や教育、福祉など地域でのネットワークをつくりながら公的支援を受ける準備を進める
本人が学齢期の間は、次の進路という大きな課題が目の前にあるので、親なきあとのことまではなかなか考えが及ばないかと思います。ただ、障害基礎年金の申請のための準備、福祉サービスや卒業後の就労につながる障害者手帳の取得など、この時期にやっておきたい大切な手続きがあります。
○障害者手帳の申請
障害者が生きやすくなるように、暮らしを支援してくれるさまざまな支援制度があります。そういった制度を利用するために、一定のハンディキャップがあることを証明するのが「障害者手帳」です。手帳を取得することで、各種の手当が受給できたり、税金や医療費などの控除、割引などを受けられたりという経済的な優遇措置があります。また、手帳があれば、障害者雇用の枠で就労することが可能となり、就職の選択肢の幅が広がるという大きなメリットもあります。
○障害基礎年金の申請準備
障害基礎年金の申請は20歳に達してからになりますが、それまでに準備しておいてほしいことがあります。知的障害や発達障害で年金申請をする場合、精神科の医師による診断書が必要になるので、診断書を書いてくれる医師を確保しておきましょう。障害が明らかになった頃は病院にかかっていても、その後大きな変化はないので通院はしていないという方をしばしば見かけますが、何年かぶりにいきなり受診して診断書を依頼しても、すぐには書いてもらえず、何回か通院してくださいと言われる可能性があります。医師としても、診断書を書くにあたり、しっかり本人の状態を見極めることが必要なのは当然でしょう。そこで、定期的に通院しておくことをお勧めします。
また、年金の申請時には病歴・就労状況等申立書という書類も一緒に提出します。発病の経緯から始めて、受診状況、日常生活や就学・就労状況について時系列で記入するもので、知的障害の場合は親が書くことがほとんどだと思います。こちらも年金申請の直前になってから書こうとしても、すぐには思い出せないこともあるため、どこかに記録を残しておくと、申請時の助けになるでしょう。
〇本人名義の口座作成
障害年金が入金される本人名義の口座を開設しておいてください。18歳で親権がなくなると、たとえ親でも原則、口座は作れないので、成年後見人を就けなければいけなくなってしまいます。口座を開設する際は、その後の管理のためにキャッシュカードも合わせて作っておきましょう。
〇医療費補助の申請
障害者医療費助成制度は、心身に障害のある人が医療を受けた際に、医療費を助成する制度です。都道府県や市区町村が実施しているもので、住んでいる地域によって、対象となる障害の程度や、助成の内容が変わってきます。本人が未成年の場合は保護者の所得、成人後は本人の所得によって受給制限があります。
たとえば東京都の場合、愛の手帳1度、2度の人は保険診療が無料となっています。お住まいの地域の障害福祉課などにぜひ確認してみてください。
〇自立支援医療制度の利用手続き
障害の程度を軽くしたり、取り除いたり、障害の進行を防いだりするための医療費について、本人負担の一部を給付するのが自立支援医療制度です。精神疾患で通院して精神医療を受ける場合に、医療費(薬代なども含む)の自己負担が通常の3割から1割に軽減されます。
このほか、直接親なきあとの対策となるものではありませんが、障害の状況等により受給できる手当(特別児童扶養手当、障害児福祉手当など)の申請も忘れずにおこなってください。
また、障害福祉の制度や仕組みは、少しずつ変化しています。新しい情報を得るために、ちょっとした不安や困りごとについて相談できるように、同じ悩みを持った家族の会などに加入することもお勧めします。
