「親なきあと」問題の歴史②~入所施設の時代

では、現在の地域生活への流れはどのような経緯でできたものでしょうか。ここで、時系列的に整理してみたいと思います。
1960年3月31日、精神薄弱者福祉法が制定され、翌日施行されました。この法律では第1条で「精神薄弱者に対し、その更生を援助するとともに、必要な保護を行う」ことを目的として掲げていました。ここでいう「更生」とは「適切な環境で可能な限り自力で生活できるようになること」という説明が付されています。「適切な環境」とは入所施設を意味しており、この法律の制定により、精神薄弱者入所施設は毎年10~15施設が新設されていきました。
障害者の親の会である、育成会による1965年の「精神薄弱者全国大会」における宣言、およびこれを受けた同年の厚生省コロニー懇親会で、長期にわたって障害者を収容保護する施設は極めて少ない実情にあるとして、「一つの生活共同体」としてのコロニー案が提案されます。そして翌年、厚生省児童家庭局が提案した「国立心身障害者コロニー計画(案)」のコロニーの目標として、「終生居住」の文言が盛り込まれることになりました。
このようにして、精神薄弱者更生施設は、終生保護としての性格を持つにいたったのです。